秋の乾燥、まだ先だと思っていませんか?保湿を切り替えるサイン
東京の平年値では、相対湿度が9月75%から11月64%へ下がる間に、空気が含む水蒸気の量は半分以下になります。切り替える時期の見きわめ方と、足す順番を整理します。

9月に入っても、日中はまだ暑いままです。店頭には「秋のうるおいケア」が並び始めましたが、いま切り替えるべきなのかは判断がつきません。
東京の平年値を見ると、空気が本当に乾き始めるのは、もう少し先です。この記事では、切り替える時期の決め方と、足していく順番を整理します。
先に結論
- 9月はまだ切り替えなくていい。空気の水蒸気が減り始めるのは10月から1
- 相対湿度の数字だけ見ていると、乾き始めを外す。9月から11月で、空気が含む水分の量は半分以下になる1
- 合図はカレンダーではなく肌に出る。つっぱりや粉ふきが出たら「量 → 油分」の順で足す
相対湿度だけを見ていると、乾き始めを外す
東京の平年値(1991〜2020年の30年平均)を見てみます1。平均相対湿度は9月75%、10月71%、11月64%、12月56%。9月から11月で11ポイントしか下がりません。
数字だけ見れば、変化はゆるやかです。ところが同じ期間に、平均気温は23.3℃から12.5℃まで落ちています1。
空気が抱えられる水蒸気の量は、気温が下がるほど小さくなります。相対湿度は「その気温で抱えられる限界のうち、何%まで入っているか」という割合なので、気温が下がると分母のほうが先に縮みます。
そこで平年値から、空気1立方メートルあたりの水蒸気量を計算してみます。9月は15.7g、10月は10.9g、11月は7.0g、12月は4.5gです。
11月の空気が含む水分は、9月の半分以下ということになります。相対湿度の「64%」という数字からは、この落差は見えません。

肌から逃げていく水分の量(経表皮水分蒸散量:肌の表面から蒸発していく水の量)は、まわりの湿度・気温・風に左右されます2。研究で測定するときに部屋の条件をそろえるのは、そのためです。
同じ相対湿度でも、気温が違えば空気が抱えている水分の量は違います。切り替えの目安を「涼しくなったら」ではなく「10月以降」に置けるのは、この差があるからです。
秋から冬に向けて、肌の測定値は下がる向きに動く
中国・昆明で、女性72人を四季それぞれ測った研究があります。頬では角層(肌のいちばん外側の層)の水分量と皮脂量が夏に最も高く、冬に最も低い値でした3。肌から逃げる水分の量は逆に、冬がいちばん高くなっています3。
ただし、チェコで1年を通して測った研究は、「冬に角層の水分と皮脂が下がることはよく記録されている」としつつ、季節変動のデータ全体は「まだ一致していない」と結論づけています4。
そこまで含めて言えるのは、向きだけです。冬に向かって下がる方向に動く。ただし、誰がいつどれだけ乾くかは、研究からは決まりません。自分の肌で見るしかない、ということです。
乾き始めの合図は、体感より先に出ている
低湿度の部屋で調べた試験があります。健康な男性16人に、25℃で相対湿度10%・30%・50%の部屋を体験してもらったものです5。
相対湿度が30%を下回ると、目と肌の乾燥が確認されました5。おもしろいのは自覚のほうで、湿度が変わった直後、参加者は「寒い」とは感じても、乾きはあまり感じていません5。
16人の小さな試験なので、30%を全員の境目とは言えません。ただ、自覚が遅れて来ることは、切り替えの判断に効いてきます。だから、合図を先に決めておきます。
- 洗顔のあと、化粧水をつけるまでのつっぱりが、前より早く来る
- 小鼻や口まわりが粉をふく。ファンデーションがよれる
- 夕方に頬がムズムズする
- 同じケアなのに、朝の肌がゴワつく
室内の湿度も見ておきます。建築物衛生法にもとづく管理基準では、事務所などの相対湿度は40%以上70%以下とされています6。外の空気に水蒸気が少ない時期に暖房を入れると、室内の相対湿度はさらに下がります。加湿は、暖房とセットで考えるほうが分かりやすいです。
足す順番は「量 → 油分」
合図が出たら、いきなり買い足さないほうが手数は少なくて済みます。

1. まず、いま使っているものを規定量まで
足りないのは製品ではなく量、ということがよくあります。皮膚科で外用薬の量をはかる目安に1FTU(フィンガーチップユニット)があり、人差し指の先から第一関節ぶんに出した量(約0.5g)で、手のひら2枚ぶんの面積に塗れるとされています7。
使っている製品に規定量の表示があれば、まずそれを読みます。無ければ1FTUを物差しにして、塗り残しがないか確かめてみてください。
2. 次に、油分でフタをする
保湿剤は役割で見ると、水を抱える「保水成分」と、蒸発を物理的に抑える「油分(閉塞剤)」に分かれます8。
総説では、ワセリンは5%以上の配合で肌から逃げる水分を98%以上抑えるとされ、ミネラルオイルやシリコーンは20〜30%と整理されています8。
夜だけ、いつもの保湿の最後にクリームやバームを重ねる。これがいちばん戻しやすい切り替えです。油分は、肌が少し湿っているうちに塗るほうが効きやすいとされています8。
3. 保水成分だけを増やさない
グリセリンなどの保水成分は、肌の奥と外の空気の両方から水を引き寄せます8。ただし引き上げた水分は、そのままでは外へ逃げやすい。だから油分と組み合わせるのが基本、と整理されています8。
化粧水を重ねる回数を増やしても手ごたえがないなら、足りないのは水ではなく、フタのほうかもしれません。
変えるのは1度に1つ。同時に3つ変えると、合わなかったときにどれが原因か分からなくなります。
よくある勘違い
「気温が下がったら、全部クリームに入れ替える」
季節による測定値の動きには個人差があり、研究の間でも一致していません4。全部を一度に替えると、ベタつきや吹き出物が出たときに戻す先がなくなります。夜だけ、1つだけ、から始めます。
「化粧水をたっぷり使えば乾燥は防げる」
水は、そのままでは蒸発します。保水成分は水を引き寄せる役割で、逃がさない役割は担っていません8。役割の違うものを、量で埋めることはできません。
「9月に乾くのは、秋の乾燥が始まったから」
東京の平年値では、9月の相対湿度は75%で、8月の74%とほとんど変わりません1。9月のつっぱりを季節のせいだと決めてしまうと、洗い方や摩擦といった別の原因を見落とします。
まとめ
出典
記号は根拠の強さです。S = 系統的レビュー・公的機関の一次資料、A = ランダム化比較試験、B = 査読付きの総説・観察研究。
- 2BResearch Techniques Made Simple: Transepidermal Water Loss Measurement as a Research ToolJ Invest Dermatol(PMID 30348333)・2018
- 3BSeasonal variations of epidermal biophysical properties in Kunming, China: A self-controlled cohort studySkin Res Technol(PMID 32196767)・2020
- 4BSeasonal variations in the skin parameters of Caucasian women from Central EuropeSkin Res Technol(PMID 33084174)・2021
- 5BPhysiological and subjective responses to low relative humidityJ Physiol Anthropol(PMID 16617203)・2006
- 乾燥
- 保湿
- 秋
- 季節の変わり目
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