秋のかゆみと赤み、乾燥のせいだと思っていませんか?
9月に顔がムズムズする、頬がうっすら赤い。保湿を厚くしてもおさまらないとき、乾燥とは別の原因が重なっているかもしれません。環境省の資料と皮膚科のガイドラインから整理します。

9月に入って、頬や目のまわりがムズムズする。うっすら赤い気もする。乾燥だと思って保湿を厚くしたのに、どうもおさまらない。この時期の肌には、乾燥とは別の原因が重なっていることがあります。秋に飛ぶ花粉です。
先に結論
- ブタクサ・ヨモギ・カナムグラの花粉は、関東ではおおむね8月から10月に飛ぶ1
- 帰宅時は、家に入る前に上着を払う。そのあと洗顔かシャワーと着替え6
- 洗ったら保湿する。角層のうるおいは、外から入ってくるものを防ぐ側にも働く5
秋にも花粉は飛んでいる
花粉といえば春、と思われがちです。でも環境省の花粉症環境保健マニュアルは、キク科のブタクサ属・ヨモギ属と、アサ科のカナムグラを挙げて、これらの花粉は「夏の終わりから秋にかけて飛散しています」と書いています1。
春のスギ・ヒノキが樹木の花粉なのに対して、こちらは草の花粉です2。同じマニュアルに載っている花粉カレンダーを関東の欄で読むと、飛ぶ時期はおおむね8月から10月にあたります1。

草の花粉は、市街地の観測ではそれほど多くありません。ただしマニュアルは「河川敷や手入れのされていない広場や野原ではかなり多い」と注意を促しています10。散歩やランニングのコースが川沿いなら、浴びる量はだいぶ変わります。
花粉の季節、肌にも症状が出ることがある
花粉症の症状というと、くしゃみ・鼻水・目のかゆみが浮かびます。ただ環境省のマニュアルは、それに続けて「花粉によって皮膚が荒れる」ことがあると書いています3。
日本皮膚科学会と日本アレルギー学会のガイドラインも、花粉による皮膚症状の悪化にふれ、その症状は「顔面などの皮膚露出部位のみではなく、全身におよぶことがある」としています4。露出しているところに出やすいけれど、そこだけとは限らないということです。
どのくらいの人に起きるのでしょうか。山梨県で季節性アレルギー性鼻炎の患者4,119人を調べた2026年の横断調査では、皮膚の症状があると答えた人が48.4%。そのうち花粉の季節に悪化すると答えた人が49.4%でした。皮膚の症状がある人のうち、顔に出るという人は64.8%です11。
ただしこの調査はスギ・ヒノキの季節を対象にしたもので、秋の草の花粉を調べたものではありません。数字をそのまま秋に当てはめることはできません。それでも、花粉の季節に肌が荒れる人は珍しくない、という手がかりにはなります。
もうひとつ、見落としやすい経路があります。同じガイドラインは、鼻をかんだり鼻をかいたりする刺激が、鼻のまわりの皮膚症状を悪化させると指摘しています4。花粉そのものより、ティッシュでこすった回数のほうが効いていることもあります。
肌が反応しやすいのは、バリアが乱れているとき
同じ量の花粉を浴びても、荒れる人と荒れない人がいます。分かれ目のひとつが角層の状態です。
ガイドラインは、角層の水分が減った肌では「種々のアレルゲンの侵入が容易になり」と説明しています。そのうえで、保湿剤の外用が角層の水分量を改善し、皮膚バリア機能を回復・維持することで、アレルゲンの侵入予防とかゆみの抑制につながるとしています(CQ24/推奨度1・エビデンスレベルA)5。
保湿は「乾燥を防ぐため」だけのものではない、ということです。外から入ってくるものに対する、ふたの役割も持っています。
参考までに、バリアをわざと乱した摘出ヒト皮膚に花粉のタンパク質を塗った2016年の実験では、何もしない皮膚では81%の細胞がそれを取り込んだのに対し、バリアを補う製剤を先に塗った皮膚では12%でした12。ただしこれは摘出した皮膚での試験で、人の肌の上で同じことが起きるかはまだ分かっていません。
帰ってからの3ステップ
ガイドラインが挙げている花粉への対策は、そのまま毎日の手順になります。「外出からの帰宅時には、家屋に入る前に衣類の花粉を払い落とす。帰宅後は速やかに洗顔あるいはシャワー、着替えを行う」6。

1. 家に入る前に払う
玄関の外で上着を払うだけで、持ち込む量が変わります。素材でも差が出ます。環境省が載せている実測では、綿を100としたとき、絹150、化繊180に対して、ウールは980でした7。

秋物のニットやウールのアウターを出す時期と、草の花粉の時期はちょうど重なります。外に着ていく1枚だけでも、つるっとした素材を選ぶと変わります。
2. 帰ったらすぐ洗う
洗顔かシャワー、そして着替えです6。髪にも花粉はつくので、その日のうちにシャンプーするのも有効とされています8。翌朝まで枕に持ち込まない、と考えると続けやすくなります。
3. 洗ったら保湿する
洗ったあとは保湿でうるおいを戻します。ガイドラインは、1日1回より朝と夕の2回のほうが保湿効果は高いとしています5。夜だけになっている人は、朝を足すところからで十分です。
よくある勘違い
「ゴシゴシ洗えば落ちる」
環境省のマニュアルは、洗顔に注意も添えています。「丁寧に洗顔をしないと眼や鼻の周囲についた花粉が侵入し、かえって症状が悪化することがあります」8。強くこするという意味ではありません。目や鼻のきわを残さないように、やさしく洗うということです。
「対策グッズを買えばいい」
同じマニュアルは、花粉症関連グッズについて「実際に花粉症の症状を改善する十分なデータは得られていません。民間療法も有効と認められたものはありません」と書いています9。お金をかける前に、払う・洗う・保湿するの3つを整えるほうが確実です。
「秋は乾燥だから、保湿を足せばいい」
保湿は土台として要ります。ただ、花粉が重なっているなら、塗る量を増やすより浴びる量を減らすほうが効きます。そして環境からの対策には限度があることも、ガイドラインが明記しています6。数週間たっても赤みやかゆみが引かないときは、自己判断で粘らず、皮膚科やアレルギー科で相談するほうが早道です。
まとめ
出典
記号は根拠の強さです。S = 系統的レビュー・公的機関の一次資料、A = ランダム化比較試験、B = 査読付きの総説・観察研究。
- 11BSkin symptoms during the pollen seasons and their association with the severity of seasonal allergic rhinitis in Yamanashi, JapanAllergology International(横断研究/n=4,119)PMID 42309866・2026
- 12CPrevention of Cutaneous Penetration and CD1c+ Uptake of Pollen Allergens by a Barrier-Enhancing FormulationSkin Pharmacology and Physiology(摘出ヒト皮膚での実験)PMID 27027785・2016
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