日焼け止めは、たぶん半分しか塗れていない
SPF50の「50」は、1平方センチあたり2mgという厚みで塗って測った数字です。実際に塗られている量はその半分以下という報告があります。足りないぶんをどう埋めるかを整理します。

毎朝ちゃんと日焼け止めを塗っているのに、夏が終わると日やけしている。そういうときに疑うのは、たいてい商品のほうです。
でも、その前に見直せるものがあります。塗っている量です。ラベルのSPFは、ある決まった厚みで塗ったときの数字だからです。
先に結論
- 顔の日焼け止めは、パール粒1個分(液状なら1円硬貨1個分)を2回に分けて塗る2
- 量が半分になると、守りは半分では済まない。落ち込みは比例より大きいと報告されています45
- 保湿剤のほうは、量を足すより朝と夜の2回にするほうが確かめられている89
SPFは「厚み」とセットの数字
SPFの測り方は決まっています。背中の何も塗っていないところと日焼け止めを塗ったところに紫外線を当て、翌日かすかに赤くなる紫外線量を比べる。その比が10名以上の平均としてラベルに載ります1。
このとき、塗る量まで決められています。1平方センチあたり2mg。つまりSPF50は「1平方センチに2mg塗ったとき50倍」という意味です1。厚みが前提に入っている数字なので、厚みが変われば数字も変わります。

実際の塗布量を調べた研究をまとめたレビューによると、人が普段塗っている量は1平方センチあたり0.39〜1.0mg。基準の2割から半分です3。日本で実使用に近い条件を測った報告でも、平均は約1mgでした6。
半分にすると、守りは半分では済まない
ここが直感とずれるところです。
20人の背中で塗布量を4段階に変えて実際のSPFを測った試験では、塗布量とSPFの関係は指数関数的でした。1平方センチあたり1mgならSPFは平方根に、0.5mgなら4乗根に落ちる、と報告されています5。
この関係式にSPF50をあてはめると、1mgでおよそ7、0.5mgでおよそ3という計算になります。20人規模の試験から出た式なので、そのままの数字を保証するものではありません。それでも「量が減るとSPFは急に落ちる」という向きは、ほかの試験とも一致しています。

しかも、高いSPFほどこの落ち込みが急になります。ラベルSPFが4・15・30・55の日焼け止めを4段階の厚みで測った試験(中国の3地域・計120名)では、SPF4と15は塗布量と直線的な関係でした。一方でSPF30と55は指数的な関係で、量が減ったときの取りこぼしがより大きくなっています4。
高い数字を選ぶほど、量をけちったときに失うものが大きい。数字を上げるより先に、量をそろえるほうが効きます。
顔に置く量の目安は、もう決まっている
環境省のマニュアルは、顔への塗り方をかなり具体的に書いています2。
- クリーム状のタイプはパール粒1個分、液状のタイプは1円硬貨1個分を手のひらに取る
- 額・鼻の上・両頬・アゴに分けて置いてから、まんべんなく伸ばす
- そのあと、もう一度同じ量を重ねる
公的な目安が、はじめから2回塗りになっているわけです。一度に厚く塗ろうとするとムラになりますが、薄く2回ならその心配が減ります。
実際、2度塗りを指示した測定では、普通に塗ると約1mgだった塗布量が2mg近くまで増えたという報告があります6。基準の厚みに届かせるいちばん現実的な方法が、重ね塗りということになります。
塗り直しは2〜3時間おきが目安です。手や衣類に触れたり、汗を拭いたりするだけでも落ちるためです2。
保湿剤は、量より先に「回数」
では保湿剤も同じかというと、ここは分けて考えたほうがよさそうです。
皮膚科では、外用薬の量をFTU(フィンガーチップユニット)というものさしで測ります。人差し指の先から第一関節まで出した量が1FTUで、約0.5g。これで大人の手のひら2枚ぶんをまかなう計算です710。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024は、保湿剤の量の目安にもこのFTUを使うとしています。成人の顔と首なら2.5FTU(1.25g)が目安です78。

ただ、量そのものの効きめについては、歯切れの悪い結果も出ています。前腕に人工的な乾燥状態をつくって14日間ぬり続けた研究では、1日1回で0.5・2・3mgと量を変えても、角層(肌のいちばん外側の層)の水分量に有意な差は出ませんでした。差が出たのは回数のほうで、1日2回(朝・夕)はほとんどの時点で1日1回を上回っています9。
規模の小さい研究なので、これだけで「量は関係ない」とは言えません。同じガイドラインも「十分な保湿効果を期待するためには塗布量が重要」と書いています8。それでも順序としては、量を増やす前に朝と夜の2回になっているかを確かめるほうが早そうです。ガイドラインが1日2回をすすめているのも、この結果を踏まえてのことです8。
まとめ
- SPFは1平方センチあたり2mgという厚みの上に成り立つ数字。厚みが減れば数字も減る1
- 実際に塗られているのは0.39〜1.0mgという報告が多く、基準の半分以下になりやすい3
- 顔はパール粒1個分(液状は1円硬貨1個分)を2回。塗り直しは2〜3時間おき2
- 高いSPFを選ぶほど、量が足りないときの取りこぼしは大きくなる4
- 保湿剤は、量を足す前に朝と夜の2回にする89
今夜できるのは、手のひらに出す量を一度だけ目で確かめることです。パール粒1個分がどのくらいか分かれば、明日の朝からは量を数えなくてよくなります。
出典
記号は根拠の強さです。S = 系統的レビュー・公的機関の一次資料、A = ランダム化比較試験、B = 査読付きの総説・観察研究。
- 3BApplication of sunscreen — theory and realityPetersen B, Wulf HC. Photodermatol Photoimmunol Photomed 30:96-101(文献レビュー)・2014
- 4BSunburn protection as a function of sunscreen application thickness differs between high and low SPFsLiu W, et al. Photodermatol Photoimmunol Photomed 28:120-6(ヒト・標準SPF測定/計120名・3施設)・2012
- 5BThe relation between sun protection factor and amount of sunscreen applied in vivoFaurschou A, Wulf HC. Br J Dermatol 156:716-9(ヒトin vivo・被験者内比較/n=20)・2007
- 6BRelationship between sun-protection factor and application thickness in high-performance sunscreen: double application of sunscreen is recommendedTeramura T, et al. Clin Exp Dermatol 37:904-8・2012
- 10BThe rule of hand: 4 hand areas = 2 FTU = 1 gLong CC, Finlay AY, Averill RW. Arch Dermatol 128:1129-30・1992
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