朝の洗顔、水だけで済ませていませんか?肌の状態で変わる朝の洗い方
朝は水だけか、洗顔料を使うか。どちらが正解かは肌の状態で変わります。日本皮膚科学会のガイドラインと比較試験をもとに、朝の洗い方の決め方を整理します。

朝の洗顔は、水だけで済ませる人と、洗顔料を使う人にきれいに分かれます。どちらの側にも「そのほうが肌にいい」という言い分があります。ところが調べていくと、一方を正解と言い切れるだけの根拠は、まだ出そろっていません。ではどう決めればいいのか。日本のガイドラインと比較試験から整理します。
先に結論
- 朝の顔にのっているのは主に皮脂。ぬるめの湯でも「ある程度」は落ちます13
- 乾燥やヒリつきが出ているときは洗顔料を最小限に。脂っぽい部分や、夜に油分を塗った部分には使う4
- どちらを選ぶにしても、湯温は38〜40℃。42℃以上は避ける5
朝の顔に、何がのっているのか
寝ているあいだの顔には、何がついているのでしょうか。日本皮膚科学会と日本アレルギー学会がまとめたガイドラインは、皮膚表面の汚れを「皮脂を主体とし、環境中の物質も混じる」と説明しています1。汗やほこりも混じりますが、主役は皮脂です。
皮脂は日中だけ出るものではありません。女性8人の顔を48時間、4時間おきに測った2004年の研究では、皮脂の分泌量に24時間の周期があると報告されています2。量に波はあっても、夜のあいだ分泌が止まるわけではない、ということです。
もうひとつ、夜に塗ったものも残ります。同じガイドラインは、軟膏を毎日塗る部位には洗浄剤を積極的に使うことを検討してよい、としています4。油分の多いクリームを重ねた翌朝は、落とすものが増えていると考えていいでしょう。

皮脂は水に溶けません。ただし、まったく落ちないわけでもない。ガイドラインは「通常、皮脂はぬるめの湯でもある程度除去できると考えられる」と書いています3。この「ある程度」という書き方が、話をややこしくしている当のものです。
「1日2回」と「水だけ」、根拠はどちらも強くない
洗顔は1日2回、とよく言われます。米国皮膚科学会も、朝と夜の1日2回に加えて、大量に汗をかいた後を挙げています8。日本の尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023も、ニキビがある人に1日2回の洗顔をすすめています6。
ただし、この推奨の強さは4段階のうち下から2番目(推奨度C1)です。ガイドライン自身が解説のなかで、洗顔の比較試験を行うことは難しく、システマティックレビューでも臨床試験のエビデンスは不十分だと書いています6。
裏づけになっている試験も小さなものです。軽症から中等症のニキビがある男性34人を、1日1回・2回・4回の洗顔に割り付けて6週間追った2006年の試験では、群と群のあいだに統計的な差は出ませんでした。1日1回に減らした群で赤みや丘疹が増えたとは報告されていますが、1グループは9人ほどです7。

では「水だけ」のほうがやさしいのかというと、そちらの根拠も強くはありません。
自分で敏感肌だと感じている人30人が、弱酸性で石けんを使わない洗浄乳で3週間洗い続けた2005年の試験では、バリア機能の指標は水を塗っただけの側と目立った差がありませんでした。21日後に皮膚表面のpHが上がり、角層の結びつきがゆるんだ点も、水だけの側で同じように起きています9。
石けんと湯だけを直接比べた試験は日本にもあります。皮疹が落ち着いている子ども29人が、四肢の片側を石けん、反対側を湯だけで8週間ほど洗ったところ、皮疹のスコアに差は出ませんでした10。
この試験でおもしろいのは、本人たちの評価のほうです。「湯だけのほうがよかった」が2人、「変わらない」が24人、「石けんのほうがよかった」が3人10。ほとんどの人は差を感じず、それでも両方向に少数の人がいました。
朝、どちらを選ぶか
一律の正解がないなら、自分の肌で決めることになります。先ほどのガイドラインが示している分け方が、そのまま目安になります4。肌が敏感に傾いている人向けの資料なので厳しめですが、判断の軸としては使えます。

洗顔料を最小限にする 乾燥が強い時期や部位、洗ったあとにつっぱる・ヒリつくとき。ぬるま湯で流し、気になる部分にだけ洗顔料を使います。
朝も洗顔料を使う 皮脂が多いところ、ニキビが気になるところ、夜に油分の多いものを塗った翌朝。Tゾーンだけ、という使い分けでもかまいません。
どちらを選んでも、次の3つは共通です。
- 1.湯温は38〜40℃にする。ガイドラインは、皮膚のバリア機能が回復しやすい温度としてこの範囲を挙げています5
- 2.洗顔料を使うならよく泡立てて、こすらずに洗う。すすぎ残さない4
- 3.洗ったあとは早めに保湿する4
判断の目安は、洗った直後ではなく5分後の感覚です。つっぱるなら落としすぎ、ぬるつきが残るなら足りていない。この見方なら、季節が変わっても自分で調整できます。
よくある勘違い
「洗う回数が増えるとバリアが壊れる」
健常な人25人の前腕で、4時間のあいだに5回洗う場合と11回洗う場合を比べた2022年の研究では、水分の蒸発量・角層の水分量・赤み・pHのいずれにも差が出ませんでした11。回数そのものより、このあとの温度や摩擦のほうが効きます。ただし前腕での短時間の試験なので、顔で毎日続けた場合の話ではありません。
「熱いお湯のほうが皮脂が落ちる」
落ちますが、必要なものまで落ちます。ガイドラインは、42℃以上の湯では皮脂や天然保湿因子(角層が水を抱えておくための成分)が溶け出すため推奨できない、としています5。健常な人50人の手で測った2022年の研究でも、熱い湯にさらしたあとは水分の蒸発量が2倍以上になったと報告されています12。
「洗顔料を使うと肌が乾く」
製品と使い方によります。中等症以下のニキビがある日本人男性20人が、低刺激の洗顔料で1日2回・4週間洗った2015年の試験では、乾燥や刺激の訴えは出ませんでした13。20人の単群という小さな試験ですが、洗顔料そのものが乾燥の原因、とまでは言えません。
まとめ
出典
記号は根拠の強さです。S = 系統的レビュー・公的機関の一次資料、A = ランダム化比較試験、B = 査読付きの総説・観察研究。
- 2BDaily variations in skin surface properties using mixed model methodologySkin Pharmacol Physiol(縦断観察/女性8人・48時間)PMID 15090716・2004
- 7BA single-blinded, randomized, controlled clinical trial evaluating the effect of face washing on acne vulgarisPediatr Dermatol(単盲検RCT/登録34人・1群およそ9人/6週間)PMID 17014635・2006
- 9AFunctional assessment of a washing emulsion for sensitive skinSkin Res Technol(対照つき比較試験/敏感肌30人・3週間)PMID 15691260・2005
- 10BWashing with water alone versus soap in maintaining remission of eczemaPediatr Int(評価者盲検・ランダム化非劣性試験/29人・8±3週間)PMID 32131146・2020
- 11BEffects of skin washing frequency on the epidermal barrier function and inflammatory processes of the epidermisContact Dermatitis(被験者内・部位ランダム化/健常者25人・前腕)PMID 35357722・2022
- 12BImpact of Water Exposure and Temperature Changes on Skin Barrier FunctionJ Clin Med(前向き観察・前後比較/健常者50人・手)PMID 35053992・2022
- 13BEffects of washing of the face with a mild facial cleanser on acne in Japanese adult malesSkin Res Technol(単群の臨床試験/日本人男性20人・4週間)PMID 25115352・2015
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