「無添加」なら肌にやさしい?パッケージの言葉の読み方
「無添加」「自然由来」「低刺激」。パッケージの言葉は、自分の肌との相性を約束するものではありません。日本の表示ルールと海外の調査から、どこを見て選べばいいかを整理します。

一度肌が荒れると、次に買うものは「無添加」「敏感肌用」と書かれたほうを選びたくなります。ただ、その言葉が何を約束しているのかは、パッケージの表側だけでは分かりません。日本と海外の表示ルール、そして製品の中身を数えた調査から、どこを見ればいいかを整理します。
先に結論
- 「無添加」は、何を入れていないかが併記されて初めて意味を持ちます。「無添加ですから安心」という書き方は、日本の業界ルールでは認められていません4
- 「香料」の2文字の中身は、日本の表示からは分かりません。香りのあるもので合わなかった経験があるなら、疑う価値のある場所です56
- 表示は選ぶための材料のひとつです。決め手になるのは、自分の肌で試した結果と、合わなかったものの記録です11
かぶれは、めずらしいことではない
一般の人を対象にしたパッチテスト(背中などに成分を貼って置き、反応を見る検査)の結果をまとめたメタ解析があります。28の研究、20,107人ぶんのデータで、20.1%が何かの成分に陽性でした1。女性では27.9%、男性では13.2%です。
内訳でいちばん多いのはニッケル(11.4%)、次が香料ミックスI(3.5%)でした1。4番目のペルーバルサム(1.8%)は、香りづけに使われてきた天然の樹脂です。

国内でも、化粧品を使って皮膚に症状が出たという相談が、2025年度に2,847件、国民生活センターに寄せられています(2026年5月31日現在。シャンプーなど頭髪用も含む数)2。皮膚科医で化粧品の安全性を研究してきた松永佳世子氏も、かぶれは稀ではなく、原因になる成分は香料・防腐剤・染料など多様だと書いています3。
「自分は肌が強いから関係ない」で片づく話ではない、というのが出発点になります。
その言葉は、どこまでを約束しているか
「無添加」── 大事なのは、そのうしろの言葉
日本には「化粧品の表示に関する公正競争規約」という業界のルールがあります。「無添加」「無配合」「不使用」と書くときは、何を配合していないのかを併記することになっています4。
同じルールで、禁じられている書き方もあります。「無添加ですから安心してお使い下さい」のように安全性を強調すること。「無添加だから肌質不問」のように対象を広げること。パラベンを別の目的で配合しているのに「防腐剤無添加」と書くこと4。
つまり「無添加」の3文字だけが大きく置かれていて、うしろに何も続いていないなら、そこから読み取れることはほとんどありません。
2001年4月から、化粧品は使っている成分をすべて表示することが義務になりました5。裏面に全部並んでいる以上、「入れていないもの」より「入っているもの」を見たほうが早い場面は増えています。
「香料」── 2文字で終わってしまう
ただし、その成分表にも読めない場所があります。日本のルールでは、香りづけに使う香料の成分名は「香料」と記載してよいことになっています5。中身が何十種類の混合物でも、表記は2文字です。
香料は、かぶれの原因として上位に来る成分群です。欧州の皮膚炎患者のパッチテスト結果を集めた系統的レビュー(84の原著論文)では、香料ミックスIに6.81%、香料ミックスIIに3.64%が陽性でした6。子どもでも4.09%、2.17%です6。
EU はここに手を入れました。2026年7月31日以降に市場へ出す製品では、新たに56種類の香料成分について、洗い流さない製品で0.001%、洗い流す製品で0.01%を超えて入っているなら、成分表に個別に書くことが求められます7。日本に同じルールはありません。

香りのある製品で合わなかったことがあっても、日本の表示だけで原因までたどるのは難しい、ということです。
「低刺激」「アレルギーテスト済み」── 併記の一文が本体
米国 FDA は、「hypoallergenic(低アレルギー性)」という言葉について、連邦の基準も定義もないと明記しています。メーカーが根拠を提出する義務もありません8。同じ FDA は、「unscented(無香)」とある製品でも、ほかの成分のにおいを隠すために香料が入っていることがある、とも書いています9。
日本では、「アレルギーテスト済み」と書くなら、同じくらいの大きさで目立つように、近くに「全ての方にアレルギーが起こらないということではありません」と併記することになっています10。「ノンコメドジェニックテスト済み」「皮膚刺激性テスト済み」も同じ扱いです10。
読むべきなのは、キャッチコピーよりこの一文のほうです。テストをしたことと、自分の肌に何も起きないことは別だと、書いてある側が認めています。
「自然由来」「オーガニック」── 天然かどうかは目安にならない
松永氏は「『天然=安全』ではありません。植物由来でもアレルギーや刺激の原因となる場合があります」と書いています3。国民生活センターの資料でも、オーガニックは低刺激・安全とは限らない、敏感肌用は個人差があり全員に安全とは限らない、と整理されています11。さきほどのペルーバルサムも、天然の樹脂でした1。
表示と中身のズレを数えた調査もあります。米国でよく売れている保湿剤174品を調べたところ、接触皮膚炎の検査に使われる代表的なアレルゲンを1つも含まない製品は12%でした。そして「fragrance free(無香料)」とうたう40品のうち18品(45%)に、香料と交差反応する成分か植物由来の成分が入っていました12。
これは成分表を数えた調査で、人の肌で試した研究ではありません。それでも、パッケージの言葉と中身が一対一で対応するとは限らない、という示唆にはなります。
今夜からできる、表示の見方
ここまで書いておいてなんですが、成分表を読み込めば解決する、という話でもありません。松永氏は「『どの成分が危険か』を成分一覧から判断するのは一般消費者にとって極めて困難」で、過度に心配するより「自分の肌との相性を試す」ことが核心だとしています11。
現実的な順番はこうなります。
- 1.合わなかった製品の成分表を、写真に撮って残す。 アレルギー歴がはっきりしている場合、その成分を避けるチェックは有効です11。記録がなければ、次に選ぶときの材料もありません。
- 2.表側のコピーより、裏の成分表と併記の一文を見る。 「無添加」ならうしろの言葉、「テスト済み」なら近くの注記です410。
- 3.新しいものは、目立たない部位で少量から試す。 顔や広い範囲に塗る前に、腕の内側などで様子を見ます3。
- 4.一度に増やすのは1つだけ。 まとめて変えると、何が合わなかったのか分からなくなります。
- 5.症状が続く・繰り返すときは皮膚科へ。 原因の成分を確かめる検査は皮膚科で受けられます3。自己判断で犯人を決めると、避けなくていいものまで避けることになります。

よくある勘違い
「敏感肌用と書いてあるから、自分にも合うはず」
表示が示しているのは、一般的な使い方を想定した配慮であって、個人の相性ではありません。敏感肌用の表示については、個人差があり全員に安全とは限らないと整理されています11。合うかどうかは、表示ではなく自分の肌でしか分かりません。
「香料と書いていなければ、香りの成分は入っていない」
日本では、香りづけの香料は「香料」の1語で書けます5。においを隠すために少量加える場合もあり、FDA は「unscented」表示の製品でも香料成分が入っていることがあると注意しています9。無香と無香料は、同じ意味ではありません。
「アレルギーテスト済みなら、自分には起きない」
そのテストは、限られた条件で反応を確かめたものです。だから「全ての方にアレルギーが起こらないということではありません」の併記が求められています10。テストの結果が、あなたの肌の結果を先取りしているわけではありません。
まとめ
出典
記号は根拠の強さです。S = 系統的レビュー・公的機関の一次資料、A = ランダム化比較試験、B = 査読付きの総説・観察研究。
- 1SPrevalence of contact allergy in the general population: A systematic review and meta-analysis(一般集団の接触アレルギー有病率/28研究・20,107人)Alinaghi F, et al. Contact Dermatitis 80(2):77-85(PMID 30370565)・2019
- 6SContact sensitization to fragrance mix I and fragrance mix II among European dermatitis patients: A systematic review(84原著の系統的レビュー)Botvid S, et al. Contact Dermatitis 91(3):177-185(PMID 38945918)・2024
- 7SFragrance allergens labelling(規則 (EU) 2023/1545 による56種類の追加と適用期日)欧州委員会(Internal Market, Industry, Entrepreneurship and SMEs)・2023
- 12BConsumer Preferences, Product Characteristics, and Potentially Allergenic Ingredients in Best-selling Moisturizers(米国のベストセラー保湿剤174品の成分調査)Xu S, et al. JAMA Dermatol 153(11):1099-1105(PMID 28877310)・2017
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